2012年2月6日

Journal of Kith (3)

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Journal of Kith
(1) (2) (3)

原著: Anonymous of /tg/
http://1d4chan.org/wiki/Journal_of_Kith

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(3・完)

石灰岩の月10日:
Boatmurderedのドワーフ達は象に対して何らかの嗜好(あるいは嫌悪)を持っていたようだ……。
とにかく沢山の彫刻、立像、アミュレットやらなんやらに多種多様な象が描かれていた。
檻に入った象、ドワーフに殺される象、ドワーフを殺す象、様々なポーズの象、
沢山のドワーフを殺す象、沢山のゴブリンを殺す象、更に沢山のドワーフを殺す象。

同行者の1人はある戦場を描いた連作を見て嘔吐した。
闘犬が子供を産んで、子犬までも戦いに加わる。
ドワーフと象が斬り合い踏み潰しあって死んでいく。
最後に誰かが、荒っぽく刻まれたメッセージを見つけた。

”ようこそBoatmurderedへ。ここに入りしドワーフは一切の望みを棄てよ。”

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石灰岩の月11日:
花崗岩のアミュレットを完成させた。黒玉の棘がついていて、
ドワーフと蛸めいた悪魔の画が彫られている。
悪魔はドワーフに名状しがたい行いをしている。
それを見た同行者達は奇異の目で私を見てきた。

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石灰岩の月13日?:
おお神よ、我々が何をしたというのか。同行者の2人が……死んだ。
他の2人がどこに居るのかも分からない。

我々が坑道の奥へと進んでいた時、どこからともなく叫びが、
憤怒と苦痛に満ちた、悪魔のような怒りの叫びが響いてきた。
そしてドワーフがーー私は確かに見たーー通路の闇から現れた!
彼は炎に包まれていた!爪先から頭まで燃え上がり、髭は山火事のごとく、
その両目は溶けた金属のように白熱していた!

そして直後、燃え上がるドワーフは同行者の一人を引き倒して火だるまにした。
他の者が火を消そうと近寄ると、ドワーフはその者を掴んで、
彼の頭を壁に叩きつけた。濡れた音がした……。
私は逃げ出した。永遠に濯げぬ汚名。
そして私は今、坑道の中で道を見失い、途方に暮れている。

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石灰岩の月??日:
私は恐ろしい。私はこの呪われた場所で死につつある。

Dodokと名乗る幼い少女と出会った。
こんな場所で、こんな子供が1人でどうやって生きてきたのかは分からない。
だが今、私は1つ疑惑をもっている……。恐ろしい疑惑を。
(不幸にも)同行者の生き残り2人を偶然見つけた時、
あの恐ろしいドワーフがそこに居て、彼らを解体していたのだ……。
ドワーフの燃える手が私の首を掴んだ。手の熱が私の皮膚を沸騰させるのを感じた。

突然、少女が私の命を救った。彼女は、先に私があげたアミュレットを
燃える悪魔の頭に投げ当てて叫んだ。「だめ!だめ!Sankisおじさん!いけない!」
ドワーフは私を地面に落とした。そして少女は悪魔の燃える手を取ったが、
炎が彼女を焼くことはなく、そのままどこかに連れていった。
何故炎は彼女を避けたのか……それよりも、Sankisおじさん?
あの悪魔のようなドワーフは、これまでの彫刻を施した張本人で、
皇帝”髭無し”Sankisなのか?

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石灰岩の月??日:
坑道の中を流れる河を、終わりなく溶岩が流れこむChasmを見た。
斜面に沿って立ち並ぶ、錆びて使えなくなった溶鉱炉を見た。
どれだけの時間が経ったのだろう。
小さな食料庫を見つけたので、すぐに餓死することはなかった。

Sankisによる数十、数百の彫刻を見た。
様々な形の財宝を見つけた。
この地獄から抜け出す道と交換すると言われたら、喜んで差し出しただろう。
悪魔のドワーフも、奇妙な少女も見かけることは無かった。

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石灰岩の月??日:
更に無数の彫刻を見つけた。
そして歴代の支配者の墓を見つけた。皇帝Sankisの墓は……空だった。
扉は中から打ち破られて、その周りの石は黒く焼け焦げていた。

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??日:
以前は自分の死を恐れていた気がするが、
今では、自分が発狂しつつあるのではと恐れている。
ドワーフを踏みつぶす象の彫刻を見つけたのだが、その目が…
その目が私を見ている気がした。私を殺したがっている気がした。
そして、悪魔のドワーフを再び目撃した。少女と遊んでいた。
彼は私を見てきたが、少女が笑い、石のボール遊びを続けようとすると目を離した。
ボール遊びに飽きた彼らが立ち去った後に、その石が落ちていた。
ドワーフの頭蓋骨だった。

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??日:
花崗岩のアミュレットを完成させた。木の棘がついていて、
ドワーフが人間を打ち倒す画が彫られている。

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??日:
玄武岩のアミュレットを完成させた。玄武岩と花崗岩の棘がついていて、
象がドワーフを打ち倒す画が彫られている。

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??日:
木のアミュレットを完成させた。皮と花崗岩の棘がついていて、
燃え上がるドワーフの画が彫られている。

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??日:
砂岩のアミュレットを完成させた。砂岩と皮の棘がついていて、
象とドワーフとゴブリンの画が彫られている。
象がドワーフを笑っている。ゴブリンがドワーフを笑っている。

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??日:
苦灰石のアミュレットを完成させた。珪化木と雪花石膏の棘がついていて、
象とドワーフと蛸の悪魔の画が彫られている。
蛸の悪魔がドワーフに名状しがたい行いをしている。象がドワーフを笑っている。

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??日:
石英岩のアミュレットを完成させた。粘板岩の棘がついていて、
ドワーフ達の画が彫られている。
1人のドワーフは燃え上がり、1人のドワーフはドワーフを打ち倒している。

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??日:
大理石のアミュレットを完成させた。黒玉と縞瑪瑙の棘がついていて、
象、ゴブリン、人間、ドワーフ、そして私の画が彫られている。

象が燃えている。ゴブリンが燃えている。
人間が燃えている。ドワーフが燃えている。私が燃えている。

象が叫んでいる。ゴブリンが叫んでいる。
人間が叫んでいる。ドワーフが叫んでいる。私が叫んでいる。

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読み終えたドワーフは、ボロボロになった革装の日記をゆっくりと机に置いた。
彼はこの日記を、奇妙なアミュレットと共に交易商から買い取った。
アミュレットは今、部屋の隅の卓の上に置かれている。

それは大理石のアミュレットで、黒玉と縞瑪瑙の棘がついていて、
2人ドワーフと、ドワーフの少女の画が彫られている。
1人のドワーフは燃えている。
燃えるドワーフが他のドワーフを打ち倒している。
ドワーフの少女は打ち倒されるドワーフを見て笑っている。

(Journal of Kith 完)

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