2012年2月2日

A Tale of Two Dwarves (3)


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A Tale of Two Dwarves
(1) (2) (3)

原著:Perterb
http://dfstories.com/a-tale-of-two-dwarves

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(3・完)

時としてドワーフは発狂し、その辺の武器を掴んで目についた者に襲いかかることがある。
これはよくあるケースで、Momuzが恐れたのもこれだった。
Momuzは隊長であり、最初に殺される可能性が高かったのだ。
狂ったドワーフは自身が殺される前に平均して4~5人を殺害する。
死を恐れない者に殺しは容易い。

しかし奇妙なことに、狂乱はドワーフにとってまだましなケースとされる。

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望みを叶えられなかったドワーフは時に、狂乱ではなく自身を殺す行動をとる。
ドワーフの文化に自殺は無いので、このような説明は良くないかもしれない。
この死に方を表すドワーフ語を訳すなら、”憂鬱”となる。

憂鬱に陥ったドワーフは何も食べず、何も飲まず、目的もなくホールを歩きまわる。
彷徨は最終的に飢餓か脱水で死ぬまで1ヶ月以上続くこともある。
一瞬で過ぎ去る狂乱と比べると、これはドワーフ達にとって悪夢そのものだ。

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”触れられた”ドワーフがアーティファクトを作れなかった失敗は、
1人の夢想家の失敗としてではなく、コミュニティ全体の失敗として受け取られる。
悪夢であると理解する鍵は、この考え方にある。

彼らは考える。
「もっと深く掘っていたら、もしかしたら」
「もっと働いていたら、もしかしたら」
「ダイヤモンドとプラチナの車を作る材料が手に入っていたかもしれない」
「車のビジョンは神からの啓示であったのに、我々の怠惰のせいで」
絶食で日に日に衰弱していくドワーフの姿は、自分達の無能さを突きつけてくる。

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Urist Kobukrinalの場合がそうだった。
その名前は今日でも、Bekemlogemのドワーフ達に恥辱の涙と自己嫌悪の震えを引き起こす。
Uristはエンジニアで、シャイな若者で、ある日”触れられた”。



(Urist Kobukrinalは社会と縁を切った)

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彼は心の欲求に従い、要塞の最下層までひっそりと下っていった。
そしてそこにある誰も使っていない機械工房を静かに、奥ゆかしく占領した。
しばらくの間、彼が居なくなったことに誰も気づかなかった。

彼が要塞の奥底で見つかったとき、彼はまったく言葉を発しなくなっていた。
その周りには石、骨、布が描かれたスケッチと、様々な種類の石が散らばっていた。
街の長老たちはありったけの布と骨を彼に見せたが、どれも彼が求めるものではなかった。
彼は何も語らなかったので、彼が何を求めているのか誰にも分からなかった。

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次の交易商人の到来まで4ヶ月もあった。
つまり、4ヶ月のあいだ新しい素材を手に入れる方法は無く、
その間にUristは一線を越えるということだ。

Bekemlogemの長老達は子供達のことを考え、とんでもない決定を下した。
彼らは石壁を作りUristを工房に密閉することにしたのだ。

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Uristは逃げ出そうとはしなかった。
ワークベンチの向こうに静かに立ち、石壁が組まれていくのを眺めていた。
石工は彼の目を見ることも出来ず、屈辱に顔を赤くしていた。

最後の石が嵌めこまれると彼は座り込んで、静かに死を待った。
42日の間、一切の音を立てることもなく。

(A Tale of Two Dwarves 完)

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※途中の画像は原文からの転載。



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