2012年1月31日

A Tale of Two Dwarves (1)


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A Tale of Two Dwarves
(1) (2) (3)

原著:Perterb
http://dfstories.com/a-tale-of-two-dwarves

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(1)

さて、ドワーフは我々とは全然違う頭をしている。

我々の場合、起きたらシャワーを浴びて、着替えて、仕事に行く。
その途中でふと、「ザクロで料理の本を一冊書いてみようか」なんて思いついたりする。
そして風呂場から出て体を拭いて、本は書かれないままに終わる。
「ネセシティ砦でのワシントンの敗北を描いたモザイクを作ろうか」
とか考えている間に到着した電車に乗り込み、生活は続いていく。

ドワーフはそうではない。もちろん彼らにも生活があり、仕事があり、
実現することのない空想をすることもある。
しかし時にはドワーフは強烈で堅固な考えにとりつかれることがある――
ドワーフ語にはこれを表すのに5種類の単語があるが、
人間の言葉では大雑把に”触れられた”と言われる。

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「ザクロで料理の本を書こう」
ドワーフは考える。
「カバーをザクロの皮で作ろう。インクはザクロの汁で作ろう。
紙は最上のパピルスで、綴じ糸には黄金の糸を使おう。
そしてその本に’Bellydowned’と名付けよう。」

「おいArast、何ぼーっとしてるんだ?」
隣で掘削していたドワーフが声をかけるかもしれない。
「クソ食らえ」
そう言ってArastは雑貨屋に殴りこみ、他のドワーフを蹴り出して、
自分の本にふさわしいザクロは無いか、9時間かけて全てのザクロを検分する。
これがドワーフの場合である。

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この話の舞台はBekemlogem“Springpainted”要塞、
この話の主役はそこに住んでいた2人のドワーフである。
1人は名を残した。もう1人は闇の中で餓えて死んだ。
前者の名はNish Oddomshetboth、後者はUrist Kobukrinalという。

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Bekemlogemはちょっと普通ではない要塞で、沼地のど真ん中に存在していた。
そもそもドワーフは沼地を好まない。泥と水が多すぎるので。
ドワーフらしい形容詞を思い浮かべた時、まず”湿っぽい”は出てこないだろう。
しかもそこはただの沼地ではなく、帯水層(※1)の上にある沼地だった。
帯水層の掘削は難しい。もちろん掘れなければ何も出来ない。

そんなわけでここに入植しようと提案したドワーフの商人、
Stukos Oddomsanrebは、彼が元々住んでいた要塞のドワーフ達に対して、
自分が狂人ではないことを必死で説明しなければならなかった。

「あそこにはカルデラがある、そこは固い岩盤のはずだから、
そっちを掘れば帯水層の下に回りこめるんだ。気をつければ大丈夫だって」
Stukosは良いドワーフだったが説得は不得意だった。
結局、彼の沼沼パラダイスに着いて行こうというドワーフは6人だけだった。

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面白いことにStukosの考えはかなり正しかった。
カルデラの周囲には岩盤があって、溶岩に足を滑らせないように注意する必要はあったが、
そこを経由して帯水層の下に洞窟を作ることが出来た。
洞窟の中の畑ではマッシュルームが栽培され、工房ではわざわざ沼地の真ん中にやってくる
変わり者の商人たちと交易するための石細工が作られるようになった。
じきに要塞は移民を受け入れられるようになった。

ここはまったく平和だった。ゴブリンの攻撃もここには無かった。
ゴブリンに攻撃されない要塞なんてめったにあるものではない。
要するに沼地とは、ゴブリンですら嫌がるような場所なのだ。

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ある年の春のこと、Bekemlogemへの移民の中にガラス吹き職人のNishがいた。
そして到着早々彼は次のような告知を受けた。
「この土地ではガラスのようなファンシーグッズへの需要は小さいし、
正直なドワーフは石で満足できるし、そもそもここにはガラスを作る為の砂がないし。
というわけでこのクロスボウを持って軍隊に入るように」

先に言った通り、沼地にはゴブリンが居なかった。
なのでクロスボウはあっても撃ち出すボルトは作られていなかったし、
ボルトがあったとしても撃つ相手がいなかった。

(2)につづく
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訳注
※1:帯水層では無尽蔵に水が染み出してくる。
変な掘り方をしなければ噴き上げはしないとはいえ、
入植直後に真っ向から挑みかかるとまず伊達にされて終わる。


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